最近の新聞にこのタイトルを見かけました。ご承知の方も多いと思いますがこの標語(みたいなもの)は死ぬ時は、「ず~っと元気でぴんぴんしていて、その時にはコロリと長患いすることなく、家族に迷惑も掛けずに、あっさり逝きたい」という、ある意味理想的な「死に様」を述べたものです。齢を重ね、ある程度、死を意識するようになると、誰もがこれには同意するのではないでしょうか。これを専門の用語では健康寿命といいます。つまり平均寿命に健康寿命をいかに限りなく近づけるかという事がポイントであり、このことにいささかでも歯科が係われそうだというお話しをします。 皆様は8020運動のことは既にご存じでしょうが、我々がこれを始めて、はや25年がたちます。そこから見えてきたことは、80歳で20本以上の歯を残しているお年寄りは非常に元気ではつらつとしている事です。歯があって何でも食べられるという一事がこれ程の効果をもたらすとは、正直25年前は思っておりませんでした。これはただ単に歯が体の健康を作るという事だけでなく、頭脳の明晰さや社会活動への積極性にまで影響する事がわかってきております。つまり食べ物を噛む (咀嚼する) という事は、顔、顎、首の筋肉を動かし、その動きが筋肉のポンプ作用となって脳に血液を送る一助となります。血液に乗って全身に運ばれる酸素を最も多く必要とするのは脳で、全呼吸量の1/3も消費するそうですから、噛むという動きが脳の活力に必要な事がよくおわかりと思います。 また一方で、人間の体の組織は使わないと衰え、失われていきます。これを廃用委縮といい、無重力を経験した宇宙飛行士の骨や筋肉が一定期間使われなかったというだけで細く弱くなる事が知られております。脳細胞は年齢と共に減少して行きますが、脳を使う事により・・・つまり刺激を多く脳に入れることにより、脳細胞の減少の速度を抑えることが出来ます。脳への刺激として最も有効で大きいものは五感 (視覚、聴覚、臭覚、味覚、触覚) を使うことで、これはお年寄りの最も大きな楽しみでもある「食べる事」に他なりません。 歯は咬む道具ではありますが、更に別な役割として「噛み応え」という口の内部の感覚器官の役割も務めているのです。これが呆け、認知症への対策となります。 無論噛む事の効用はこの他にも唾液の分泌促進と唾液の抗菌作用や胃腸を若々しく保つこと、しっかり噛むことでの肥満防止等がありますし、口の中の細菌のコントロールをすることで糖尿病を軽減し、肺炎、心臓疾患、低体重児、早産等を予防する事が出来るという事もわかってきております。 歯(義歯)の状態の良い人ほど、晩年の医療費が少なくて済むこともいわれ始めております。 私達歯科医師としては 「昨日食べた○○は美味しかったね」と最後にいって、静かに旅立たれるような形であって頂きたいと思っております。

  山田 徹