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TOP >  静岡県歯科医師会コラム >  日本の長寿を支える公的医療保険制度

日本の長寿を支える公的医療保険制度


2012年の日本人の男女合わせた平均寿命は84歳で、世界最長となっています。世界の平均寿命は70歳でそれより14年も長いわけです。この長寿を支えているのが、我が国の公的医療保険制度であることは議論を待たないところであります。

日本の公的医療保険は皆保険制度であり、すべての国民は何らかの公的医療保険に加入しなければなりません。医療保険の加入者は保険料を出し合い,病 気やけがの場合に安心して医療が受けられるようにする相互扶助の精神に基づき、1961年に国民健康保険法が改正され,国民皆保険体制が確立されました。

公的な医療保険は大きく二つに分けられます。一つは会社員が加入する健康保険、公務員の共済保険、船員の船員保険のように、組織に雇用されている人を対象とする「被用者保険」で、もう一つは、自営業者や被用者保険の退職者などを対象とした「国民健康保険」です。

さて、それでは日本の医療保険は どのようなシステムになっているのでしょうか。

*国民皆保険
前述したとおり、国民は皆、医療保険に入る権利と義務を持っています。これは、日本在住の外国人についても同じです。「健康だから医療保険には入らない」という選択は許されません。
*フリーアクセス
健康保険証を持っていれば、全国どこの医療機関でも受診することが可能です。日本国民は 病院に行き診察してもらうことを当たり前に思っていますが、欧米では病院は入院機関であり、外来の患者さんは基本的に診てもらうことができません。行こう と思ったら、かかりつけのお医者さんにまず診てもらい、紹介してもらってから行く訳です。患者が自由に好きな医療機関に掛ることのできる日本の仕組みは非 常に便利で、世界的には非常に恵まれたシステムなのです。
*現物給付
保険証を医療機関に提示し、診療や検査、投薬、入院などの医療行為で支給されるものを「現物給付」といいます。一方、出産育児一時金、埋葬料など のお金で支給されるものを「現金給付」と呼びます。日本の公的医療保険は、医療サービスそのものを支給する、現物給付のみです。また介護保険は原則として 現金給付はありません。
以上の3点が柱となり、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」ことにより、日本においては「誰もが一定の負担でいつでもどこでも安心して必要な医療を受けられる」ことが普通の感覚になっています。

それでは世界の先進諸国の医療保険制度はどうなっているのでしょうか。

おおまかに分類すると、税方式による国営または公営の保健・医療サービス(イギリス、スウェーデン等)と社会保険方式(ドイツ、フランス、日本等)の二つに分かれます。

国営方式のイギリスでは、国民保健サービス(NHS:National Health Service)という公的機関が医療サービスを運営しています。「ゆりかごから墓場まで」は第二次世界大戦後にイギリス労働党の掲げたスローガンであり ますが、すべての国民は基本的に無料で医療を受けることができます。しかしながら、患者が自由に医療機関を選ぶことはできず、また、医師、看護師不足が深 刻で、家庭医の受診が 2 、 3 週間待ち、病院の受診は数ヶ月待たされる場合もあります。

高福祉・高負担といわれるスウェーデンの消費税はなんと25%です。しかも医師不足であり、医療機関は長蛇の列で、診察まで数日かかるというケースもあるようです。

社会保険方式のフランスやドイツは日本とよく似た制度で基本的に国民は少ない自己負担で医療を受けることができ、優れた制度ではありますが、医療費の対GDP比は高く、受診にも制限があります。

アメリカはというと、いままでの公的医療制度は、高齢者向けのメディケア、低所得者と障害者向けのメディケイドと呼ばれるものがあり、一般的な現役 世代は自己負担で民間医療保険に加入する必要がありました。しかしながら経済上の理由等により民間保険に加入できず無保険の状態になっている人が約5千万 人以上いるといわれ、大きな社会問題となっていました。これを解決するためにオバマ政権が取り組んできた医療保険制度改革法(通称“オバマケア”)が、平 成26(2014)年1月1日をもって本格施行されました。いわゆる「国民皆保険制度」でありますが、複雑なため国民の多くがその仕組みを理解できていな いことと、いろいろな問題点、根強い反対もあるため今後の展開を注視する必要があります。

以上のことから、日本の医療提供体制が優れていることがいることがお分かりになりましたでしょうか。日本の医療制度にも様々な問題点はありますが、この国民皆保険制度を維持していく事が我々の責務であると考えております。

理事  山田 秀司