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健康とだ液の働きについて

 最近「だ液が減って口が乾く」といったお年寄りが増えてきました。家族から、口臭を指摘されたり、食べ物が飲み込みにくい、口内炎ができる等のトラブルで悩んでいる方も多いかもしれません。これはドライマウス(口腔乾燥症)と呼ばれ、ドライマウスの症状を訴える人は日本に約800万人いると推定されています。重症になると、摂食障害、不眠、発音障害等の症状もおきる場合があります。  主な症状として、味がよくわからない、口内炎や口角炎がおきる、口が乾いて唇や舌がひび割れる、口臭があり会話しづらい、むし歯、歯肉炎、歯周炎になりやすい、カンジタ症になる等があります。  唾液が少なくなる原因としては、薬の副作用(降圧剤、花粉症の薬、自律神経の薬や抗うつ剤等)や加齢によるもの(更年期障害を含む)、生活習慣(口呼吸、不潔な口腔、ストレス等)、病気(シェーグレン症候群、糖尿病、パーキンソン病等)、放射線治療等が考えられます。  だ液を増やす対策としては、唾液腺のマッサージ(耳下腺、顎下腺、舌下腺等を指先を使って食前に円を描くように回す、押してみる等)、薬の変更(主治医に別の薬を処方してもらう)、ストレスのかからない生活、舌の運動(舌を前後・左右に動かしたり、舌先を回す、舌打ちする等)、人工だ液の活用(スプレー、ジェルタイプ等)、食品(酸味のある物、昆布、納豆、ガム等)が有効と言われています。  だ液の働きとしては、全身の健康を守り細菌の侵入を防ぐ(生態防御として、ラクトフェリン、ムチン、免疫グロブリン等の抗菌因子により細菌の増殖を抑制する)、パロチンによる老化防止、ペルオキシダーゼ、カタラーゼ、アスコルビン酸等により活性酸素を減少させる、さらに、歯の石灰化を促しむし歯の進行を防ぐ、㏗を維持する(酸性に傾いた口腔内を食後30~40分で食前の状態に戻す)、だ液アミラーゼなどの消化酵素により消化吸収を助ける等です。  噛むことにより顎からの刺激で脳が活性化され、運動生理機能が向上し認知症になりにくくなると言われており、オーラルフレイル予防につながりますので、ぜひ健康の為に積極的に嚙むことをお勧めしたいと思います。

地域保健部理事  柏木秀俊

歯みがきと健康長寿

平成24年6月に厚生労働省が公表しました「健康寿命」において、静岡県は男性が2位、女性が1位、男女総合で1位という結果が発表されています。「健康寿命」とは日常生活において健康上制限されることのない生活期間と言われています。よく知られている「平均寿命」とはその時の0歳の人がその後どれくらい生きられるかを示しています。
実際には健康寿命と平均寿命の差は、男性で8.35年、女性で10.89年あり、その期間は健康上生活に支障がある期間とも言えます。
静岡県では県民の特定健診データから健康マップが作成されています。それによりますと、メタボ該当者と高血圧有病者、習慣的喫煙者は県東部に集中し、糖尿病有病者においては特定の市町で高い傾向があり、糖尿病予備群では県西部において多いという結果になっています。伊豆地域では塩味の濃い料理、東部地域は揚げ物料理、西部地区は野菜や芋料理を食べる回数が多く、地域により食の特徴がみられます。
糖尿病は最近の調査で糖尿病が強く疑われる人が950万人、糖尿病予備群が1100万人、合計で2050万人で、実に国民の5人に1人が該当します。しかも糖尿病は年々増加傾向にあるとも言われています。この糖尿病との関連が強いと言われる歯周病が重症化すると歯周ポケット内の歯周病菌が血管内に侵入し、サイトカインという物質を産生します。このサイトカインは血液の中での血糖をコントロールしているインシュリンの働きを妨げて糖尿病が悪化し、歯周病菌に感染しやすくなり歯周病がさらに重症化していきます。
歯周病と糖尿病が重症化する原因として、不良な口腔清掃習慣や食事、運動、睡眠、ストレス、喫煙、飲酒などが上げられます。毎日の歯磨き回数が1回以下の群と、2回以上の群ではメタボ発症率、有病率、中性脂肪率で差がみられ、プラーク(歯垢付着)指数と糖尿病HbA1cの値は口腔ケアにより改善します。
健康増進と疾病予防をするポイントとして、食事、運動だけでなく口腔清掃(口腔ケア)、歯磨き回数を増加することが高血圧、糖尿病、心血管病変などの予防に寄与するものと考えられます。住民がそれぞれの健康課題に気づき、自ら生活習慣を改善し健康づくりを行なおうと心がけることが健康寿命の延伸の1つのキーポイントになります。

理事  柏木 秀俊

地域保健部高齢期専門部会

健康寿命73.9歳で全国2位の健康長寿県として知られる静岡県では、これを維持するために色々な方向から考えています。
しかしながらその一方で、認知症を発症してしまう方もいらっしゃいます。
認知機能が下がると歯科の場合一般診療での治療が難しくなるのも事実です。
では、どうすればいいのでしょうか?
まずは、予防について考えなければならないでしょう。定期健診を受け、かかりつけ歯科医を持つことが大事です。発症前までに口腔内管理を行っていれば一般歯科診療も簡単に済みますから大事です。診療所は、かかりつけ機能強化型診療所、在宅支援歯科診療所などの施設基準を充たしておくことが大事です。
健康長寿のために歯の健康は、欠かせないでしょう。では、延伸のために何をしなければいけないのでしょうか?定期健診を習慣づけ、よく噛めるようにして、かかりつけ歯科医を作っておくことが必要です。かかりつけ機能強化型診療所の存在は、患者さんにとって大いに強みになっていくでしょう。
県歯では、今年度も研修会・勉強会に、たくさんの先生方が受講し研鑽に励まれています。
県民の健康は静岡県歯科医師会の望みです。

理事  山本 繁

口は命の入り口、心の出口
~噛むから始まる健康づくり~

私たちの体は口から食べたもので出来ています。 『食』は命のもと、元気や健康の源です。
賢く『食』を選び、『食べ方』を学び自分の健康を自分で守る。口を命の入り口にするか、病の入り口にするかそれは私たちの意識いかんに関わっています。賢く「食」を選び食べ方を学ぶ。生涯の食習慣の礎となる子どもたちの「食」を考えるとき、子ども達のために何ができるのか?明るく元気で笑顔の子どもたちを育むために咀嚼(そしゃく)をテーマに今私たちができることをお話します。

<噛むから始まる健康づくり>~噛ミング30(カミングサンマル)を目指して~

言うまでもなく、子どものころに身についた食習慣は、その人の一生の食習慣を左右する大きな意味を持ち、子ども達の豊かな人間性を育み、生きる力を身につけていくために「食」の持つ意味は何よりも重要です。子ども達は家庭や社会との様々な関わりの中で、「食」に関する知識・技術や「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できるようになっていきます。第3次食育基本計画にもあるように、食べ物と身体の関係等を知り、自分にとって必要な食事の内容と量を理解し、食べ物を選択する力や、よく噛んで味わって食べるなどの食べ方を身につけることが生涯健康であるための資質や能力を育成していくうえで大切です。しかし、現在の子ども達を取り巻く環境は本来食育推進において重要な役割を果たすべき家庭が十分に機能していないのが実情で6つの「こ」食化(個食・固食・子食・孤食・小食・粉食)が子ども達の食生活の悪化につながっています。こうした中、子ども達の健康課題に対処すべき学校歯科保健の役割は大きく特に歯の生え代わりなどお口の機能が大きく変化する学童期にそのステージにあった食べ方を学ぶことは重要です。よく噛むことによって唾液がたくさん分泌され、味わいがより深くなることや、よく噛むことが、肥満予防、味覚の発達、発音、脳の活性化、むし歯予防、がんの予防、消化を助けるなど、全身の健康に関わるのことを学びます。給食時の誤飲・誤嚥・窒息事故防止の観点から、「食べ方」の指導、食べるときの姿勢などや緊急処置法の指導も忘れてはなりません。一口の量を知り、食品の物性を学ぶことも子ども達にとっては大切です。また食べ方の及ぼす影響は多面的です。例えば精神機能への拡がりです。よく噛むことで心が寛ぎ、ストレスも発散されます。豊かな五感(視覚・嗅覚・味覚・聴覚・触覚)も育まれます。この五感を育む食べ方が、人間性豊かな笑顔の素敵な子ども達の心を育みます。
食を通して生涯健康で過ごすためには、その基盤となる歯・口が正常に機能することが前提となることは言うまでもありません。歯・口の健康と関連した心身の健康づくりの視点から指導することは、こども一人ひとりの「生きる力」を育みます。「噛ミング30(カミングサンマル)」というキャッチフレーズが子ども達を支える一つの指針として提唱され、噛ミング30運動が8020運動と同様に各職種と連携し推進されることを心から願っています。

*噛ミング30(カミングサンマル)
一口30回以上噛むことを目標としたキャッチフレーズ。平成21年7月に歯科保健と食育のあり方に関する検討会報告書「歯・口の健康と食育~噛ミング30を目指して~」(厚生労働省)より発出されて、噛ミング30運動が展開されています。

理事  竹内 純子

日本の長寿を支える公的医療保険制度

2012年の日本人の男女合わせた平均寿命は84歳で、世界最長となっています。世界の平均寿命は70歳でそれより14年も長いわけです。この長寿を支えているのが、我が国の公的医療保険制度であることは議論を待たないところであります。

日本の公的医療保険は皆保険制度であり、すべての国民は何らかの公的医療保険に加入しなければなりません。医療保険の加入者は保険料を出し合い,病 気やけがの場合に安心して医療が受けられるようにする相互扶助の精神に基づき、1961年に国民健康保険法が改正され,国民皆保険体制が確立されました。

公的な医療保険は大きく二つに分けられます。一つは会社員が加入する健康保険、公務員の共済保険、船員の船員保険のように、組織に雇用されている人を対象とする「被用者保険」で、もう一つは、自営業者や被用者保険の退職者などを対象とした「国民健康保険」です。

さて、それでは日本の医療保険は どのようなシステムになっているのでしょうか。

*国民皆保険
前述したとおり、国民は皆、医療保険に入る権利と義務を持っています。これは、日本在住の外国人についても同じです。「健康だから医療保険には入らない」という選択は許されません。
*フリーアクセス
健康保険証を持っていれば、全国どこの医療機関でも受診することが可能です。日本国民は 病院に行き診察してもらうことを当たり前に思っていますが、欧米では病院は入院機関であり、外来の患者さんは基本的に診てもらうことができません。行こう と思ったら、かかりつけのお医者さんにまず診てもらい、紹介してもらってから行く訳です。患者が自由に好きな医療機関に掛ることのできる日本の仕組みは非 常に便利で、世界的には非常に恵まれたシステムなのです。
*現物給付
保険証を医療機関に提示し、診療や検査、投薬、入院などの医療行為で支給されるものを「現物給付」といいます。一方、出産育児一時金、埋葬料など のお金で支給されるものを「現金給付」と呼びます。日本の公的医療保険は、医療サービスそのものを支給する、現物給付のみです。また介護保険は原則として 現金給付はありません。

以上の3点が柱となり、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」ことにより、日本においては「誰もが一定の負担でいつでもどこでも安心して必要な医療を受けられる」ことが普通の感覚になっています。

それでは世界の先進諸国の医療保険制度はどうなっているのでしょうか。

おおまかに分類すると、税方式による国営または公営の保健・医療サービス(イギリス、スウェーデン等)と社会保険方式(ドイツ、フランス、日本等)の二つに分かれます。

国営方式のイギリスでは、国民保健サービス(NHS:National Health Service)という公的機関が医療サービスを運営しています。「ゆりかごから墓場まで」は第二次世界大戦後にイギリス労働党の掲げたスローガンであり ますが、すべての国民は基本的に無料で医療を受けることができます。しかしながら、患者が自由に医療機関を選ぶことはできず、また、医師、看護師不足が深 刻で、家庭医の受診が 2 、 3 週間待ち、病院の受診は数ヶ月待たされる場合もあります。

高福祉・高負担といわれるスウェーデンの消費税はなんと25%です。しかも医師不足であり、医療機関は長蛇の列で、診察まで数日かかるというケースもあるようです。

社会保険方式のフランスやドイツは日本とよく似た制度で基本的に国民は少ない自己負担で医療を受けることができ、優れた制度ではありますが、医療費の対GDP比は高く、受診にも制限があります。

アメリカはというと、いままでの公的医療制度は、高齢者向けのメディケア、低所得者と障害者向けのメディケイドと呼ばれるものがあり、一般的な現役 世代は自己負担で民間医療保険に加入する必要がありました。しかしながら経済上の理由等により民間保険に加入できず無保険の状態になっている人が約5千万 人以上いるといわれ、大きな社会問題となっていました。これを解決するためにオバマ政権が取り組んできた医療保険制度改革法(通称“オバマケア”)が、平 成26(2014)年1月1日をもって本格施行されました。いわゆる「国民皆保険制度」でありますが、複雑なため国民の多くがその仕組みを理解できていな いことと、いろいろな問題点、根強い反対もあるため今後の展開を注視する必要があります。

以上のことから、日本の医療提供体制が優れていることがいることがお分かりになりましたでしょうか。日本の医療制度にも様々な問題点はありますが、この国民皆保険制度を維持していく事が我々の責務であると考えております。

理事  山田 秀司

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