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歯みがきと健康長寿

平成24年6月に厚生労働省が公表しました「健康寿命」において、静岡県は男性が2位、女性が1位、男女総合で1位という結果が発表されています。「健康寿命」とは日常生活において健康上制限されることのない生活期間と言われています。よく知られている「平均寿命」とはその時の0歳の人がその後どれくらい生きられるかを示しています。
実際には健康寿命と平均寿命の差は、男性で8.35年、女性で10.89年あり、その期間は健康上生活に支障がある期間とも言えます。
静岡県では県民の特定健診データから健康マップが作成されています。それによりますと、メタボ該当者と高血圧有病者、習慣的喫煙者は県東部に集中し、糖尿病有病者においては特定の市町で高い傾向があり、糖尿病予備群では県西部において多いという結果になっています。伊豆地域では塩味の濃い料理、東部地域は揚げ物料理、西部地区は野菜や芋料理を食べる回数が多く、地域により食の特徴がみられます。
糖尿病は最近の調査で糖尿病が強く疑われる人が950万人、糖尿病予備群が1100万人、合計で2050万人で、実に国民の5人に1人が該当します。しかも糖尿病は年々増加傾向にあるとも言われています。この糖尿病との関連が強いと言われる歯周病が重症化すると歯周ポケット内の歯周病菌が血管内に侵入し、サイトカインという物質を産生します。このサイトカインは血液の中での血糖をコントロールしているインシュリンの働きを妨げて糖尿病が悪化し、歯周病菌に感染しやすくなり歯周病がさらに重症化していきます。
歯周病と糖尿病が重症化する原因として、不良な口腔清掃習慣や食事、運動、睡眠、ストレス、喫煙、飲酒などが上げられます。毎日の歯磨き回数が1回以下の群と、2回以上の群ではメタボ発症率、有病率、中性脂肪率で差がみられ、プラーク(歯垢付着)指数と糖尿病HbA1cの値は口腔ケアにより改善します。
健康増進と疾病予防をするポイントとして、食事、運動だけでなく口腔清掃(口腔ケア)、歯磨き回数を増加することが高血圧、糖尿病、心血管病変などの予防に寄与するものと考えられます。住民がそれぞれの健康課題に気づき、自ら生活習慣を改善し健康づくりを行なおうと心がけることが健康寿命の延伸の1つのキーポイントになります。

理事  柏木 秀俊

地域保健部高齢期専門部会

健康寿命73.9歳で全国2位の健康長寿県として知られる静岡県では、これを維持するために色々な方向から考えています。
しかしながらその一方で、認知症を発症してしまう方もいらっしゃいます。
認知機能が下がると歯科の場合一般診療での治療が難しくなるのも事実です。
では、どうすればいいのでしょうか?
まずは、予防について考えなければならないでしょう。定期健診を受け、かかりつけ歯科医を持つことが大事です。発症前までに口腔内管理を行っていれば一般歯科診療も簡単に済みますから大事です。診療所は、かかりつけ機能強化型診療所、在宅支援歯科診療所などの施設基準を充たしておくことが大事です。
健康長寿のために歯の健康は、欠かせないでしょう。では、延伸のために何をしなければいけないのでしょうか?定期健診を習慣づけ、よく噛めるようにして、かかりつけ歯科医を作っておくことが必要です。かかりつけ機能強化型診療所の存在は、患者さんにとって大いに強みになっていくでしょう。
県歯では、今年度も研修会・勉強会に、たくさんの先生方が受講し研鑽に励まれています。
県民の健康は静岡県歯科医師会の望みです。

理事  山本 繁

口は命の入り口、心の出口
~噛むから始まる健康づくり~

私たちの体は口から食べたもので出来ています。 『食』は命のもと、元気や健康の源です。
賢く『食』を選び、『食べ方』を学び自分の健康を自分で守る。口を命の入り口にするか、病の入り口にするかそれは私たちの意識いかんに関わっています。賢く「食」を選び食べ方を学ぶ。生涯の食習慣の礎となる子どもたちの「食」を考えるとき、子ども達のために何ができるのか?明るく元気で笑顔の子どもたちを育むために咀嚼(そしゃく)をテーマに今私たちができることをお話します。

<噛むから始まる健康づくり>~噛ミング30(カミングサンマル)を目指して~

言うまでもなく、子どものころに身についた食習慣は、その人の一生の食習慣を左右する大きな意味を持ち、子ども達の豊かな人間性を育み、生きる力を身につけていくために「食」の持つ意味は何よりも重要です。子ども達は家庭や社会との様々な関わりの中で、「食」に関する知識・技術や「食」を選択する力を習得し、健全な食生活を実践できるようになっていきます。第3次食育基本計画にもあるように、食べ物と身体の関係等を知り、自分にとって必要な食事の内容と量を理解し、食べ物を選択する力や、よく噛んで味わって食べるなどの食べ方を身につけることが生涯健康であるための資質や能力を育成していくうえで大切です。しかし、現在の子ども達を取り巻く環境は本来食育推進において重要な役割を果たすべき家庭が十分に機能していないのが実情で6つの「こ」食化(個食・固食・子食・孤食・小食・粉食)が子ども達の食生活の悪化につながっています。こうした中、子ども達の健康課題に対処すべき学校歯科保健の役割は大きく特に歯の生え代わりなどお口の機能が大きく変化する学童期にそのステージにあった食べ方を学ぶことは重要です。よく噛むことによって唾液がたくさん分泌され、味わいがより深くなることや、よく噛むことが、肥満予防、味覚の発達、発音、脳の活性化、むし歯予防、がんの予防、消化を助けるなど、全身の健康に関わるのことを学びます。給食時の誤飲・誤嚥・窒息事故防止の観点から、「食べ方」の指導、食べるときの姿勢などや緊急処置法の指導も忘れてはなりません。一口の量を知り、食品の物性を学ぶことも子ども達にとっては大切です。また食べ方の及ぼす影響は多面的です。例えば精神機能への拡がりです。よく噛むことで心が寛ぎ、ストレスも発散されます。豊かな五感(視覚・嗅覚・味覚・聴覚・触覚)も育まれます。この五感を育む食べ方が、人間性豊かな笑顔の素敵な子ども達の心を育みます。
食を通して生涯健康で過ごすためには、その基盤となる歯・口が正常に機能することが前提となることは言うまでもありません。歯・口の健康と関連した心身の健康づくりの視点から指導することは、こども一人ひとりの「生きる力」を育みます。「噛ミング30(カミングサンマル)」というキャッチフレーズが子ども達を支える一つの指針として提唱され、噛ミング30運動が8020運動と同様に各職種と連携し推進されることを心から願っています。

*噛ミング30(カミングサンマル)
一口30回以上噛むことを目標としたキャッチフレーズ。平成21年7月に歯科保健と食育のあり方に関する検討会報告書「歯・口の健康と食育~噛ミング30を目指して~」(厚生労働省)より発出されて、噛ミング30運動が展開されています。

理事  竹内 純子

日本の長寿を支える公的医療保険制度

2012年の日本人の男女合わせた平均寿命は84歳で、世界最長となっています。世界の平均寿命は70歳でそれより14年も長いわけです。この長寿を支えているのが、我が国の公的医療保険制度であることは議論を待たないところであります。

日本の公的医療保険は皆保険制度であり、すべての国民は何らかの公的医療保険に加入しなければなりません。医療保険の加入者は保険料を出し合い,病 気やけがの場合に安心して医療が受けられるようにする相互扶助の精神に基づき、1961年に国民健康保険法が改正され,国民皆保険体制が確立されました。

公的な医療保険は大きく二つに分けられます。一つは会社員が加入する健康保険、公務員の共済保険、船員の船員保険のように、組織に雇用されている人を対象とする「被用者保険」で、もう一つは、自営業者や被用者保険の退職者などを対象とした「国民健康保険」です。

さて、それでは日本の医療保険は どのようなシステムになっているのでしょうか。

*国民皆保険
前述したとおり、国民は皆、医療保険に入る権利と義務を持っています。これは、日本在住の外国人についても同じです。「健康だから医療保険には入らない」という選択は許されません。
*フリーアクセス
健康保険証を持っていれば、全国どこの医療機関でも受診することが可能です。日本国民は 病院に行き診察してもらうことを当たり前に思っていますが、欧米では病院は入院機関であり、外来の患者さんは基本的に診てもらうことができません。行こう と思ったら、かかりつけのお医者さんにまず診てもらい、紹介してもらってから行く訳です。患者が自由に好きな医療機関に掛ることのできる日本の仕組みは非 常に便利で、世界的には非常に恵まれたシステムなのです。
*現物給付
保険証を医療機関に提示し、診療や検査、投薬、入院などの医療行為で支給されるものを「現物給付」といいます。一方、出産育児一時金、埋葬料など のお金で支給されるものを「現金給付」と呼びます。日本の公的医療保険は、医療サービスそのものを支給する、現物給付のみです。また介護保険は原則として 現金給付はありません。

以上の3点が柱となり、「必要かつ適切な医療は基本的に保険診療により確保する」ことにより、日本においては「誰もが一定の負担でいつでもどこでも安心して必要な医療を受けられる」ことが普通の感覚になっています。

それでは世界の先進諸国の医療保険制度はどうなっているのでしょうか。

おおまかに分類すると、税方式による国営または公営の保健・医療サービス(イギリス、スウェーデン等)と社会保険方式(ドイツ、フランス、日本等)の二つに分かれます。

国営方式のイギリスでは、国民保健サービス(NHS:National Health Service)という公的機関が医療サービスを運営しています。「ゆりかごから墓場まで」は第二次世界大戦後にイギリス労働党の掲げたスローガンであり ますが、すべての国民は基本的に無料で医療を受けることができます。しかしながら、患者が自由に医療機関を選ぶことはできず、また、医師、看護師不足が深 刻で、家庭医の受診が 2 、 3 週間待ち、病院の受診は数ヶ月待たされる場合もあります。

高福祉・高負担といわれるスウェーデンの消費税はなんと25%です。しかも医師不足であり、医療機関は長蛇の列で、診察まで数日かかるというケースもあるようです。

社会保険方式のフランスやドイツは日本とよく似た制度で基本的に国民は少ない自己負担で医療を受けることができ、優れた制度ではありますが、医療費の対GDP比は高く、受診にも制限があります。

アメリカはというと、いままでの公的医療制度は、高齢者向けのメディケア、低所得者と障害者向けのメディケイドと呼ばれるものがあり、一般的な現役 世代は自己負担で民間医療保険に加入する必要がありました。しかしながら経済上の理由等により民間保険に加入できず無保険の状態になっている人が約5千万 人以上いるといわれ、大きな社会問題となっていました。これを解決するためにオバマ政権が取り組んできた医療保険制度改革法(通称“オバマケア”)が、平 成26(2014)年1月1日をもって本格施行されました。いわゆる「国民皆保険制度」でありますが、複雑なため国民の多くがその仕組みを理解できていな いことと、いろいろな問題点、根強い反対もあるため今後の展開を注視する必要があります。

以上のことから、日本の医療提供体制が優れていることがいることがお分かりになりましたでしょうか。日本の医療制度にも様々な問題点はありますが、この国民皆保険制度を維持していく事が我々の責務であると考えております。

理事  山田 秀司

「食べること」は「生きること」

団塊の世代が高齢者に達して、65歳を超える日本人の高齢人口の割合が約30%を超えます。この日本の高齢化は国民が医療福祉の充実により、長生き をするようになった結果でもあります。戦後に生まれた団塊の世代は、日本の経済産業の最前線で企業戦士として高度成長期を支えて来ました。生活水準の向上 により平均寿命は男性79.59歳、女性86.35歳ですが、昭和22年から24年に生まれた810万人が長生きするともう少し伸びます。しかし、健康で 概ね自立出来る健康寿命は平均72歳であり、健康で生活している時期と寝たきり等で介護に頼る期間の差は約10年間あります。高度先進医療や介護施設の充 実で平均寿命が延びていますが、本来は一生元気で自立した生活すなわち健康寿命が延びることが望まれます。

政府の諮問機関である社会保障制度改革国民会議によると、高齢者社会に伴って年金、医療、介護などの社会保障給付は、既に年間100兆円を超えてい ます。さらに、制度改革の全体像、改革の具体策に少子化対策、医療・介護の改革、年金分野の改革とに区別しています。全体像の報告の中では基本的な考え方 として、自助・共助・公助の最適な組み合わせに、国民は自らが働いて自らの生活を支え、自らの健康は自ら維持するという「自助」を基本とします。生活上の リスクに対しては、社会連帯の精神で共同してリスクに備える仕組みである「共助」が自助を支えます。自助や共助では対応出来ない困窮などは、条件を定めて 「公助」が補完する仕組みとしています。毎年増え続ける社会保障の対策には、給付の重点化・効率化・負担の増大抑制の不可避を強調しているが、巨額な負担 を生みながら財政運営を実施しています。その負担を後世に付け回すことが無いように、現状を現役の世代で確保する為に、消費税の増税が論議され来年4月に 予定されています。増税分は社会保障制度の財源として全て充てられる事になっているが、きちんと実施されるのかしっかりと政府の動向を監視したいと思いま す。

国民会議の報告では「自助」即ち、自らの健康は自分で守ることが基本であると述べています。健康で毎日を暮すことは、万人の望むところであり人生の 最高の喜びです。ある行政機関が、高齢者に生活アンケート調査を実施したところ、地域で友人や住民同士で買い物、世間話や趣味のおしゃべり、旅行や一緒に 食事することが上位に掲げられており、元気に暮らす為の環境作りを行政に希望しています。特に、外出して友達とおしゃべりしながら食事をする事は至極の楽 しみであると言っています。

静岡県歯科医師会では、県市町の多くの自治体において「歯と口の健康に関する条例」を制定して県民の健康を守っています。歯科医療の役割は、口腔疾 患である齲蝕と歯周病の治療を行い、しっかりと噛むことが出来るようにすること。しかし、残念ながら歯を失った患者さんには義歯などを装着して咀嚼機能の 回復を図り、健康寿命を延長することです。更には介護状態などで寝たきりの方には、歯科医療の提供による口腔機能の維持や誤嚥性肺炎の防止をはかり、自分 の口で食べる人生を送って頂くようにQOLの向上を支援することです。歯科医療は「食べる事・話す事」が出来るようにすることで、「生きる力を支える生活 の医療」です。

厚労省と日本歯科医師会では、一生自分の歯で食べる事が出来るように、80歳になっても自分の歯が20本以上あれば食事が出来るように、1989年 から8020運動を展開しています。静岡県では地域の歯科医師会が地方自治体や住民と一緒になり、8020推進活動を続けており、歯科について学習された 「8020推進員」が各地域で活躍し、その数は7,800名に及びます。活動は高齢者への対策だけではなく、少子化対策として、妊婦の生活指導・健康相 談、幼児期の齲蝕予防。また、若年者の歯周病対策等の口腔疾患予防の啓発に取り組んでいます。

多くの方々にとって、人生の楽しみの一つは食べる事です。良い食材を求め素晴らしい調理をしても、噛んで食感を味わえなければ美味しいとは言えませ ん。例え残念ながら歯を失っても、義歯などを装着すれば咀嚼力はある程度回復します。食べることは、噛んで味わい生きることの素晴らしさを実感する瞬間で す。「食べることは生きること」なのです。

静岡県歯科医師会は、各種職業の方々と連携協力し、歯や口の機能を維持・向上することで、県民の皆様が健康で活力のある人生を暮せる社会の実現を目指して行きます。

副会長 栗田省吾

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